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18歳以上ですか?
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果ての先に。
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はぁ。
やっぱり奏太さんて凄いなぁ。
その頃、拓篤は奏太に惚れなおしていた。
赤口の今日、結婚式披露宴は1つだけで、奏太さんは式の打ち合わせを夕方に入れていた。
「桑原くん、よだれでてるよ。」
「え?!」
奏太さんと同僚の芽依さんから揶揄われた。
カウンターでお客様と打ち合わせをしている。
今日は出席者の報告と、引出物の打ち合わせだ。
「次の打ち合わせの時は、会場を彩る生花と、披露宴で使用するクロス類のカラーの打ち合わせをしたいと思います。ドレスに合わせてブーケも選べますので、カタログをご覧になって下さい。・・・さ、先程式が終わった式場に、まだ生花が飾ってあります。会場の花を見に参りましょうか。」
事務室側の壁に張り付いて奏太さんの話を聞いていた。
後学のためと称して、打ち合わせの様子を聞いて改めて思った。
式って何か月も前からこうやって準備するんだ。
花のひとつひとつ、クロスのカラー。
全てを打ち合わせして、要望通りに叶えていく。
プランナーの人たちの最終チェックの大切さが実感出来た。
ここまで寄り添って決めた内容を、間違えたセッティングで台無しにするなんて、絶対にあってはならないことだから。
ちゃんと、しなきゃ。
それにしても、奏太さん、かっこいい・・・。
壁越しに会話を聞きながら、うっとりとした。
「桑原くん、よだれでてるよ。」
「え?!」
「奏太さん、カッコイイ!芽依ちゃん、可愛い!って思ってたでしょ?」
ブハ。
打ち合わせの邪魔にならないよう、こそこそと話しながら笑った。
「はい、思ってました。・・・こうやって打ち合わせしてたんだって思って、身が引き締まりました。」
「ふふ、ありがと。」
芽依さんが図を描いてくれた。
「うちの会社って、こうやってホテルに入ってるじゃない?」
「はい。」
式でホテルに支払われるお金から、決められた割合が会社に入る。
ホテルは専門家を入れることによって、引出物の棚卸しやプランナーを育てる人件費、毎年のように変わる流行りを勉強する必要が無くなる。
また、プランニングが悪く不満足だった場合の責任もホテルは負う必要が無い。
「私たちって別の会社組織だから自由にできるところもあるし、逆にやりにくいこともある。桑原くんが、何に興味を持っているのかわからないけど、直接雇用にしろ私たちみたいに委託されるにしろ、メリットデメリットをよく考えた上で就活してね。」
「はい。」
あ、戻ってきたみたいだ。
「あのチャペルの白のお花、素敵だったわ。」
「白の装花なら、このページですね。青い花をポイントであしらったこちらもございますよ。」
ペラペラとページをめくる音がする。
「ね、どう思う?」
「君の好きな方にしていいよ。」
「うーん。」
ふふ、悩んでる。
「まだ時間はあります。おふたりで話し合って決めて下さい。次回はいつにされますか?」
「仕事終わりに来ても大丈夫でしょうか。」
「もちろんです。」
奏太さんとカップルで日程を決めた。
「エンディングムービーを作成する担当を呼んでおきます。どういう写真を入れるか、どういうエピソードを入れるか、ざっくりと考えておかれて下さいね。」
「はい。」
ふー、本当にいろいろある。
大変だ。
カップルを見送った奏太さんが裏に戻ってきた。
「お疲れ様でした。」
「お疲れー。」
いつもの奏太さんだ。
「どうだ、惚れたか。」
「ブハ。惚れました。」
「やぁねぇ。イチャイチャは違うところでやってよ。」
3人で笑う。
「拓篤、ちょっと待っててくれ。これやったら帰るわ。」
「えー、帰っちゃうの?」
「おー。芽依ちゃんは6時からなんだろ?俺、終わったもんよ。」
ぶー。
「月曜は遅出するだろ?俺が出とくから。」
「わかったわ。交代ね。」
平日の午前中は事務処理が殆どだ。
仕事帰りのカップルの打ち合わせは夜。
お互いに協力しあいながら、適度に休みを取っていくのが俺たち流だ。
「ん。」
頷いて、いま打ち合わせた内容をまとめた。
ムービー制作事務所にもメールを入れた。
「よし、じゃあ帰る。」
「ほーい。お疲れ様でした。」
そんなわけで、俺たちは肩を並べて帰った。
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